年末のご挨拶としてお世話になった人に贈り物をするのが「お歳暮」です。お歳暮は、おもに目上の人への感謝の気持ちを表すために贈る物ですから、失礼のないようにしたいですね。
ここでは、お歳暮のマナーや、どのようなときにお歳暮を贈るべきなのか、何を贈ればいいのかといったことについてご説明します。
そもそもお歳暮って何?
「歳暮」というのは、漢字からもわかるように、元々は「年末」という時期のことを指す言葉でした。昔の日本では、この時期にお祭りで神様への供物を準備していたため、時期そのものを指す言葉と「品物を用意する」という風習が合わさって起源となったといわれています。その後、年末にお世話になった人への挨拶回りと結び付いて、現在のお歳暮の形になったと考えられます。
以前は、「会社の人をはじめとする仕事関係の人や、習い事の先生に贈る」「直接お歳暮を持っていって挨拶をする」というのが主流でしたが、現在では、親戚や知人などの親しい人に贈ったり、配送業者を利用して贈るケースも増えています。
なお、お中元もお歳暮と同じく、お世話になった人への季節の贈り物ですが、こちらは年末に贈るお歳暮とは異なり、夏に贈る物です。お中元を贈った人にはお歳暮も贈るというのがマナーですから、お中元だけを贈ることがないようにしましょう。
お中元よりもお歳暮のほうが、より重要な行事ですので、もしも金銭的な理由などから両方贈ることができない場合は、お歳暮のみを贈るようにしてください。
誰にお歳暮を贈ればいいの?
お歳暮は、「○○さんには絶対に贈らなければならない」というルールはありません。あくまでも感謝の気持ちを表すものですから、お世話になっていると思っている人に贈るようにしましょう。
ただし、一度だけ贈って、その後は贈らないというのは失礼です。ビジネス上の付き合いがなくなった会社などは別ですが、個人的に贈る場合は、毎年贈り続けることになるということを理解した上で、贈るかどうかを検討するようにしてください。もしも、「一度だけ贈りたい」という場合はお歳暮の時期を避け、「御礼」などという名目で贈るようにしましょう。
会社同士の場合は取引先に贈ることになりますが、近年では、お歳暮などを一切受け取らないという決まりがある企業も出てきています。相手の迷惑にならないように気を付けましょう。
個人の場合は「親(結婚している場合は両家の親)」「上司」「習い事の先生」「恩師」「仲人」などに贈ります。そのほか、日頃からお世話になっている友人・知人に贈っても問題はありません。ただし、学校の先生は、「受け取らない」としている人もいますので注意しましょう。
会社の上司や恩師に、お中元やお歳暮を贈るのは当たり前という時代もありましたが、今では一切お中元やお歳暮のやり取りはしないという人も増えています。とはいえ、伝統あるお稽古事をしている人や年上の親戚の中には、「お歳暮やお中元のやり取りをするのが当たり前」と考えている人も多くいます。贈ったほうがいいか迷ったときは、同じ立場のお稽古仲間や親戚などに聞いて、どうしたらいいか検討しましょう。
お歳暮を贈る時期は?
元々お歳暮は、12月13日から20日までの間に贈るものとされていましたが、現在では日付けが前倒しになる傾向が強まり、11月下旬頃に贈ることも珍しくなくなりました。また、どちらかというと、関西よりも関東のほうが早めに贈る傾向があります。
なお、20日に間に合わない場合でも、年内に届けばお歳暮として贈れます。それにも間に合わなかった場合は、関東では1月7日、関西では15日までに「お年賀」として贈ることになります。
立場別のお歳暮の相場
お歳暮の金額は、家庭の事情によっても変わるものですから、「必ずいくら以上でなければいけない」という決まりはありません。しかし、お世話になっている目上の人に贈るという性質上、数百円や1,000円などというように、あまりに安い品物を渡すのは失礼です。反対に、ものすごく高額な物を贈るのも相手に気を使わせてしまいます。
翌年以降にお歳暮の金額を下げるのは失礼にあたるため、贈る側としてもあまり高額な品物を選んでしまうと、毎年贈り続けるのが負担になってしまいますから、無理のない金額設定をしましょう。一般的な相場としていわれているのは、3,000~5,000円程度の品物です。また、特にお世話になっている人に対しては、10,000円程度の物を贈る場合もあります。お世話になっている知人などには3,000~4,000円程度、仲人や両親には5,000円程度を目安にしてみてはいかがでしょうか。
覚えておきたいお歳暮マナー
お歳暮ののし紙は、紅白の花結びの水引がついた物を使います。水引の上部にしるす表書きは、「御歳暮」または「お歳暮」とし、下部に自分の苗字または氏名を書きましょう。のし紙のかけ方には、包装紙の上からかける「外のし」と、包装紙の内側にかける「内のし」があります。
直接贈り物を持っていく際は、単なる手土産なのかお歳暮なのかがひと目でわかるように、「外のし」を使います。反対に、持参せずに配送業者を使って贈る場合は、途中でのし紙がはがれたり汚れたりすることがないよう、「内のし」にする場合が多くなっています。また、近年では、環境保護の観点から、完全包装ではなく、短冊型ののし紙を利用した「エコ包装」を推進している店舗が増えています。これは、短冊ののし紙をそのまま箱に貼付したり、その上から包装したりする方法です。
お歳暮を持参する場合は、お世話になったお礼や挨拶を口頭で述べることになります。しかし、実際のところ、昨今ではほとんどのお歳暮は配送業者によって届けられます。そのため、挨拶状を同封するか、はがきを別送することになります。デパートや通信販売サイトなどからお歳暮の配送を注文した場合は、挨拶状を同封できない場合が多いため、相手に品物が届く前に到着するよう送りましょう。ただし最近では、挨拶状は送らないという人も増えており、電話やメールで済ませたり、品物だけを贈ったりするケースも珍しくありません。とはいえ、お歳暮は目上の人に贈る物ですから、やはり、一筆したためるのが正式なマナーです。
おすすめのお歳暮定番商品
以前は、お歳暮には新巻鮭や数の子などがよく贈られていました。お正月に食べてもらうこともできるため、こうした品物を贈る場合は、年末に近い日付けに届くようにすることもあります。そのほか、牡蠣や蟹といった冬ならではの食材、体を温めてくれる入浴剤、お鍋ができる鍋セット、高級なハムやソーセージなども人気です。
女性やお子さんのいる家庭や甘い物が好きな人には、焼き菓子やチョコレートなどのスイーツを贈るのもいいでしょう。お酒好きの人には、日本酒やビールも人気ですし、自分の住んでいる土地の名産品を毎年贈るという方もいます。
お歳暮の品物に「こうでなければならない」という決まりはありません。相手の家族構成や好みを考慮した上で、喜ばれる物を選びましょう。
好みがわからない場合や相手の希望に沿った物を選んでほしい場合は、カタログギフトを利用するのも便利です。
お歳暮は、お世話になった人への感謝の気持ちを品物にのせて、挨拶とお礼をするための物です。一年の終わりに相手のことを想って品物を選び、翌年もいい関係を続けていけるよう感謝の気持ちを込めて贈りましょう。