「昇進祝い」や「栄転祝い」のお返しは、原則として不要とされています。 ただし、実際のところは、多くの人が今後の付き合いを考えて、何らかの形でお返しをしています。具体的には、近況報告を兼ねたお礼状を送る場合と、お礼状に品物を添えてお返しを贈る場合があります。
それぞれについて、贈る時期や贈り方のマナー、相手に合わせたお礼状の文面例をまとめて紹介します。
昇進祝い・栄転祝いのお返しにお礼状のみを送る場合
昇進や栄転は誰でもできるものではありません。一方では、昇進できなかった人もいるわけですので、お祝いのお返しは派手にならないように配慮して、お礼状のみを送るという人も珍しくありません。
お礼状を送る時期
着任・就任してから1~2週間以内が目安です。ある程度落ち着いた段階で出します。
お礼状の送り方
はがきまたは封書で送ります。封書のほうがより丁寧です。また、相手と親しい関係であれば、メールでも構わない場合もありますが、できればはがきか封書にしましょう。
お礼状の文面
昇進や栄転の自慢にならないよう、謙虚な表現を心掛けましょう。 お祝いをもらったこと、これまでお世話になったことへの感謝に加え、新たなポストでの自身の意気込みや抱負を盛り込みます。
「昇進」や「栄転」という言葉は、自分を褒め称えることになるので使用を避け、逆に「私のような者が」など自分を卑下する言い方も、相手に不快感を与えることがありますので避けましょう。
相手別に、文例をいくつかご紹介します。
<取引先へのお礼状>
拝啓 春陽の候、時下ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
平素は格別のご高配を賜り厚く御礼申し上げます。
さて、この度は○○就任に際し、すばらしいお祝いの品を頂戴し、誠にありがとうございました。
新しい任地でも一日も早く皆様のお役に立てるよう、全力を尽くす所存でございますので、
今後とも変わらぬご指導とご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。本来であればお伺いして御礼を申し上げるべきところ、まずは略式ながら御礼申し上げます。
敬具
<元上司へのお礼状>
謹啓 春日の候、○○課長におかれましてはますますご清祥のこととお慶び申し上げます。
この度は私の○○への転任に際し、激励のお言葉とご厚志をいただきまして、
誠にありがとうございます。また、○○在任中は、ご厚情にあずかり深く感謝申し上げます。
○○課長から賜りましたご指導・ご鞭撻を胸に、新任地におきましても、
全身全霊で職務に打ち込む所存でございます。今後とも変わらぬご指導ご厚誼のほど、よろしくお願い申し上げます。
末筆ながら○○課長のご健康とより一層のご活躍をお祈り申し上げます。
まずは、略儀ながら書中をもちまして御礼申し上げます。
謹白
<知人へのお礼状>
拝啓 春風が心地いい季節を迎え、ますますご活躍のこととお慶び申し上げます。
さて、この度の転任に際しましては、心のこもったお言葉とお祝いをいただき、誠にありがとうございました。
おかげ様で、今月○日をもちまして、無事新しい任地に着任いたしました。
正直に申し上げて、まだ新しい職務への戸惑いも残ってはおりますが、これまでの経験を活かし、
微力ながら誠心誠意努力してまいりたいと思っております。今後とも、よろしくご指導くださいますようお願い申し上げます。
まずは、略儀ながら御礼申し上げます。
敬具
昇進祝い・栄転祝いのお返しに、お礼状と品物をいっしょに贈る場合
元上司など、目上の人などから高額なお祝いをもらった場合は、お礼状とともに、品物を添えてお返しをするのがおすすめです。
ポイントは以下のとおりです。
品物を贈る時期
あまり早くお返しを贈ってしまうと、相手に「忙しいところに悪いことをしたかな…」と余計な心配を抱かせてしまいます。着任・就任後、1~2週間以内を目安に、ある程度落ち着いた段階で贈ります。
品物の金額
贈られた品の半額程度が目安です。
あまり高額な物を選ぶと、かえって相手に気を使わせてしまうので気を付けましょう。
品物ののし
水引は紅白の蝶結びにして、のしをつけます。表書きは「御礼」とし、下には自分の苗字を書きます。
お礼状
品物に添える形で贈ります。
親しい間柄ならメッセージカードでもいいでしょう。
品物
相手との関係に合わせるかたちでカタログギフトや日用品、お菓子の詰め合わせなどから選ぶのが定番です。
なお下着や靴など下半身に身に着ける物は「相手を踏みつける」という意味を持つので避けましょう。ガラスなどの壊れやすい物・割れやすい物もお返しの品物には適していません。
相手別に、いくつか定番の品を紹介します。
●親しくしている元上司や取引先など、好みや家族構成がわかっている個人への贈り物
お酒好きで、相手のお酒の好みがわかるなら、ワインや日本酒などの好きなお酒とおつまみのセットがおすすめです。家族で味わえるグルメセットやジュースの詰め合わせなどもいいでしょう。
●好みがわからない個人への贈り物
趣味や嗜好がわからない場合は、カタログギフトや商品券、ギフト券など、相手が自分で使い道を決められる物がいいでしょう。日用品なら、シンプルで高級なタオルといった汎用性の高い物を選べば、失敗がありません。
●部署の同僚や部下など会社関係者への贈り物
みんなで分けやすい個別包装のお菓子やジュースの詰め合わせのほか、オフィスのインテリアとなる花瓶敷きなどが喜ばれます。分けるのにナイフやお皿が必要なお菓子は、相手に余計な手間をかけさせてしまうので避けましょう。ハンカチなどの小物を人数分用意するのもおすすめです。
なお、部署一同でお祝いの品を贈ってくれたような場合は、わざわざお返しという形をとらなくても、お菓子や赴任先の名物を贈ることで、感謝の気持ちを伝えることもできます。
特に遠く離れた場所に転勤したような場合には、その土地の名物のお菓子や食べ物の中から分けやすい物を選び、近況報告を兼ねたお礼状と一緒に贈るといいでしょう。
栄転祝い・昇進祝いのお返しは、マナー上絶対に必要なものではありませんが、祝ってくれた人たちに感謝の気持ちを伝えることは、人間関係を円滑にし、仕事を進める上でも重要なことです。
これからも良好な関係を築いていくために、お礼状やお返しを贈ることは決して無駄ではありません。ぜひ実践してみてください。