結婚祝いや出産祝いなど、「お祝い」とセットで語られることの多い「内祝い」ですが、本来はどのような意味を持つ言葉なのでしょうか。また、内祝いとは、どのようなときに贈るものなのでしょうか。あいまいな理解のまま「内祝い」という言葉を利用して失礼にあたることがないよう、「内祝い」の意味や、「お返し」との違いについて知っておきましょう。
内祝いとは?
内祝いは、「身内の中で起こったおめでたいことや、喜びをお裾分けする」という意味の言葉です。ですから、本来は「お返し」という意味は内祝いにはありません。
近所の方や日頃お世話になっている方、親族などに喜びのお裾分けとして贈り物をするのが「内祝い」です。
しかし昨今では、いいことがあったからといって、お祝いをいただいていない方に対して内祝いを贈るということはあまりしません。これは、いただいたお祝いへのお返しとして内祝いを利用することが多くなったためで、かえって「お祝いをしなければいけないのか」と気を使わせてしまうことにもなりかねないため、安易に利用することは控えたほうが良いでしょう。
また、いくらお返しの意味合いが強いといっても、お返しという言葉を使うのは失礼にあたるため、内祝いに添えるお礼状などにも、そのようなことは書かないように気を付けなければいけません。
内祝いの種類と熨斗(のし)の書き方・選び方
内祝いには、さまざまな種類があります。次のような事柄については、内祝いという形で返礼品をお贈りするケースがあるということを覚えておきましょう。
結婚内祝い
披露宴にお招きした方のご祝儀に対しては、披露宴でのお食事や引き出物がお返し代わりとなるため、それ以外に内祝いを贈る必要は原則としてありません。
お招きできなかった方からお祝いをいただいたときは、内祝いとして半額程度をお返しするのがマナーです。
熨斗(のし)の書き方・選び方
結婚式内祝いののし紙は、のしと水引が印刷されたものを使います。慶事用の水引には、「結び切り」と「蝶結び」があるので、のし紙を選ぶ際は注意が必要です。
結び切りは、一度結んだらなかなかほどけません。その結び方から「一生結ばれる」という願いが込められています。そのため結婚内祝いの場合は、紅白の結び切りを使用するのが一般的です。
のしの表書きは、水引の上に「御祝」または「寿」と、水引の下に贈り主の名前を書きます。文字を書く際は筆ペンや毛筆、サインペンなどを使用し、濃くはっきり書くことが大事です。また、表書きを書くときは、文字が水引に重ならないよう注意しましょう。
出産内祝い
出産祝いをいただいた方に出産内祝いを贈ります。この場合も、いただいたお祝いの半額を目安にするのがいいでしょう。
内祝いは、お祝いをいただいた人の名前で贈るのが基本ですが、出産内祝いに関しては、生まれて来た赤ちゃんの名前で贈るという特徴があります。間違えないようにしましょう。
熨斗(のし)の書き方・選び方
出産内祝いののし紙は、のしと紅白蝶結びの水引が印刷されたものを使います。「蝶結び」は、一度結んだらほどけない「結び切り」とは異なり、何度もほどくことが可能です。出産は何度あっても喜ばしい出来事であるため、「蝶結びの水引」を使ってお祝いをします。
出産内祝いの表書きは、水引の上に「内祝」と書くのが一般的です。水引の下には贈り主の名前を書きます。出産内祝いの場合は、赤ちゃんの名前のお披露目を兼ねているため、赤ちゃんの名前を書くとよいでしょう。なかには「赤ちゃんの名前の漢字が読めない」といった声もあるので、名前の右側に読み仮名を書くと親切かもしれません。
新築内祝い
家を建てたときや引越しをしたときに、お祝いをいただくことがあります。こうしたお祝いに対しては、新居に招くということがお返しになります。家にお招きして、おもてなしをすることで感謝の気持ちを表しましょう。
予定が合わなかったり、遠方で自宅に招けなかったりした場合は、内祝いとして半額程度のお返しをします。
熨斗(のし)の書き方・選び方
新築内祝いは、のしと水引が印刷されたのし紙を使用します。新築内祝いは、何度あっても嬉しいお祝い事の1つとして考えられているため、紅白の蝶結びが印刷された水引を選びましょう。
のし紙の表書きは、水引の上に「新築内祝」、「内祝」、「御礼」と書き、水引の下に贈り主の名前を書きます。贈り主の名前は、世帯主の名前や名字が一般的です。表書きの文字を書く際は、筆ペンや毛筆、サインペンを使って濃くはっきりと書きます。
開店、開業内祝い
お店や事務所などの開店・開業祝いをいただいたときのお返しは、セレモニーを開催するかどうかによって異なります。
お祝いのパーティーを開く場合は、そこに招待することがお返し代わりになります。また、招いた方がお帰りの際には、簡単な引き出物をお渡しするといいでしょう。このような会を開かない場合や、来られなかった方に対しては、内祝いやお礼として品物を贈ります。この場合も、予算はいただいた物の半額を目安にしましょう。
熨斗(のし)の書き方・選び方
開店内祝いや開業内祝いののし紙は、何度繰り返してもよいという意味合いから、紅白の蝶結びの水引が印刷されたものを使います。表書きの上部分は、「開店内祝」や「開業内祝」、「内祝」や「御礼」など、いただいたお祝いに合わせて書きましょう。
一方、表書きの下部分には贈り主の名前、つまり社名や店名を書きます。ただし、タオルやお菓子など、ほんの気持ち程度の記念品や粗品を渡す場合は、何も書かない状態の無地熨斗でもマナー違反にはなりません。
快気祝い(快気内祝い)
病気に対してお見舞いをいただいたときは、病気が治癒してから1~2週間ほどあとに、快気祝い(快気内祝い)としてお返しをします。
快気祝いが一般的ですが、快気内祝いとするのも誤りではありません。なお、病気が全快していないという場合は、お礼とするのがよいでしょう。
熨斗(のし)の書き方・選び方
快気祝い(快気内祝い)は、病気や怪我が治ったことをお祝いするものです。快気祝いの場合は、二度と病気や怪我に悩まされないよう願いを込めて、紅白の結び切りの水引を使用します。
表書きの上部分の書き方は、「快気祝」または「快気内祝」、下部分には、贈り主である病気や怪我をした人の名前を書きましょう。表書きに書く名前は、名字だけでもフルネームでも問題ありません。
もし、直接会って手渡しできるのであれば、「お見舞いを頂戴しありがとうございました。お陰様で元気になりました」、「無事に退院できました」など、ひと言声をかけるとよいでしょう。
内祝いの金額は半額(半返し)〜3分の1が基本
内祝いは、いただいたお祝いの半額程度のものを贈る、いわゆる「半返し」が基本です。つまり、1万円のお祝いをいただいたら5,000円程度、5,000円のお祝いをいただいたら2,500円程度のものを贈ります。半額以上のものを贈ると、相手に気を遣わせてしまったり、失礼にあたったりするおそれもあるため注意しましょう。
一方、両親や親戚などから高額な出産祝いをもらったときは、半返しにこだわる必要はありません。なぜなら、たとえ半額であってもお返しが高額になってしまうからです。その場合は、いただいたお祝いの3分の1程度の金額で内祝いを贈りましょう。
もし、いただいたものの金額がわからないときは、内祝いの相場とされる3,000~5,000円の品物を選びます。内祝いは、いただいたお祝いの感謝の気持ちを示すものなので、正確な金額を守らなくてもルール違反にはなりません。
内祝いに関する疑問Q&A
内祝いってお返しのこと?内祝いにお礼をした方がよいの?など、内祝いに対して疑問をもっている方もいるのではないでしょうか。ここからは、内祝いに関して最も多く寄せられる疑問について解説します。
内祝いとお返しの違いは?
お祝いをいただいたら、内祝いをするのが一般的です。そのため、内祝いを「お返し」と捉えている方も少なくありません。しかし、本来内祝いは「身内の中で起こったお祝い事や喜びを周りの人にお裾分けする」という意味を表す言葉です。
つまり、お祝いをいただいていてもいなくても、「我が家のお祝い事を一緒に喜んでくれたら嬉しいです」という意味合いで親戚やご近所に贈る習わしだったのです。
時代の流れと共にその意味合いが変化し、現代の内祝いは「お祝いのお返し」「感謝のしるし」として贈られるものとなっています。ただし、地域によって内祝いの解釈が異なるケースもあるので、居住する地域の慣習に合わせることが無難です。
内祝いをもらったらお礼をするべき?
結論からいうと、内祝いにお礼は必要ありません。なぜなら現代の内祝いが、お祝いのお返しという意味合いで贈られているからです。内祝いにお礼をすると、お返しにお返しをする形になり、お返しをし続けることになってしまいます。
ただし、内祝いを受け取ったというお礼の連絡は必要です。相手との関係性にもよりますが、できればメールやラインではなく電話でお礼を伝えた方が丁寧でしょう。
内祝いを贈った相手は「きちんと届いただろうか」と心配しているため、受け取ったその日に連絡するのがマナーです。さらに、目上の方には電話連絡をした後、手紙やハガキでお礼状を出すとより良い印象を与えます。